…
「た、大変ですよ山口さん!」
山口「どうした」
「この朝刊をみてください!」
『山口俊FA確実 全体ミーティング欠席』
『DeNA山口、ミーティング欠席 退団確定的!?』
『高田GM激怒 山口FA「するんじゃない」』
山口「!? な、なんだこれは!?なんでこんなことに…」
「昨日のミーティング欠席が問題になっているんですよ!」
山口「何故だ!?俺は事前に球団にも断りを入れたぞ!」
「…マスコミはそんなこと知ったことではないですよ。まるでドタキャンでもしたかのような書き方になっています」
山口「こ、これじゃ完全に俺が独善的な奴に思われるじゃないか!」
「…ファンからも厳しい声が上がっています。見てください、某匿名掲示板やヤフコメを」
名も無き修羅A「山口がこんな奴だとは知らなかったわ。しかもこいつ投手キャプテンだろ。横浜に居たくねーならさっさと出てけや」
名も無き修羅B「結局こいつも村田や内川みたいに出ていくのか。せめてあいつらみたいに横浜に砂かけて出てくことはするなよ」
名も無き修羅C「どすこい氏ね」
他にも謂れのない誹謗中傷、山口への人格攻撃まで行われていた。
山口「こいつら人の気も知らないで好き勝手言いやがって…!俺だってこんなことで報道されるなんて思ってもなかったんだ…!」
「ど、どうしましょう。球団に取り繕ってもらうよう図らってもらいましょうか…!?」
頭を垂れた山口は、しばしの少考の後、再び顔を上げた。
山口「…いや、決めた。俺はFAを宣言する。むしろ、決心できるいい機会だったかもしれない」
「そ、そんな」
山口「心配するな、まだ別に他球団に移籍すると決めたわけじゃない。なんにせよ、他球団の評価は聞こうと思う。そのうえで、横浜に残留がベストさ。今回のこの件で、FA宣言に関しては踏ん切りがついた」
(だが…ベイスターズよりも良い条件を提示されて、俺は三浦さんのように残留を選択するということができるのだろうか…?)
・・・・・
・・・
・・
!?
ククク…
本来、FA前の球団と契約している選手とは交渉はできない…いわゆるタンパリングになってしまうからな…
しかし…私は山口と世間話をしただけっ…!
『善意の第三者』っ…!
ルールに抵触などしていない…!突く…間隙…!
FA権を獲得した選手たちというのは、誰しもが一度は行使したいと思うもの…!ならばその思いを少し後押ししてやればいい…!
作ってやればいい…本人がFA権を行使するに、納得足り得る理由を…!
ファンの思い、球団の留意、そして愛着っ…!崩すっ…!内側から…!
山口のケースでは、本人が思っている以上に、世間の関心は自分に向いているということに気が付いていない…!
致命的になる…ちょっとした気の緩み…
結局…それが大甘なのよ…!
マスコミ…ファン…
書くっ…!噂するっ…!あることないこと…
奴らの大好きなのはセンセーショナルっ…!
勝手に仕立て上げてくれる…裏切者っ…!
瓦解するっ…!信頼、信用っ…!そして生まれる…不信、不安、不満っ…!
…我々の唯一の懸念は中日の大島のようにそもそもFAを宣言しなかった場合…
これはもうどうしようもない…交渉すらできないのだからお手上げ…
しかし…一度FA宣言さえさせてしまえばあとはこっちのものっ…!
ククク…後は我々が最も得意とするやり方で…
魅せる…っ!最大限の『誠意』っ…!
「…当球団は山口選手をお待ちしております」
‐完‐
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