山口「FA…どうしようか…他球団の評価は聞いてみたいけどチームはようやく上昇気流に乗った。エースとして抜擢してくれたラミレス監督への恩もある」
某関東邪悪球団「来季のチームの優勝のために、FAで優秀な先発は是非とも欲しい…しかし、昔のように球団のブランド力、資金力が全てでは無くなった時代。本当に実力のある選手はメジャーへ行ってしまうし、黒田や三浦のように『男気』を見せれば、引退後も球団の顔として安泰だ。だが、このような時代だからこそ様々なやり方がある…交渉人君、頼んだよ」
ネゴシエイター「はっ、おまかせください。必ずや御期待に応えてみせます」
・・・
・・
山口「明日は全体ミーティングか…正直行きづらいな…CSの大事な時期に離脱してチームに迷惑をかけて、FA去就問題もある。否が応にも注目されるんだろうな…」
ヌッ
ネゴシエイター「行かなければいいんじゃないですか?」
山口「わっ!だ、誰だアンタ」
ネゴシエイター「いきなり驚かせて申し訳ありません。ワタクシ、貴方に興味を示してる某球団の職員です」
山口「はあ…私も報道であなた方が興味を持って下さっているのは知っています。しかし、私もまだ迷っている段階でして」
ネゴシエイター「でしょうねえ。しかし、それは貴方が血の滲むような努力をして獲得した権利。結論が出るまで、ゆっくりとお考え下さい」
山口「お気遣いありがとうございます。それでは、私は明日のミーティングに参加しなければならないのでそろそろ…」
ネゴシエイター「…そのような場に行ったら迷いが生まれるだけですよ」
山口「!!」
ネゴシエイター「よく考えてみてくださいよ。全体ミーティングとは、来季の見通しを今一度全体で再確認するもの。もちろんあなたは、来季も『いるものとして』計算されています。今の貴方にはプレッシャーにしかなりません。それに、周りの選手からは当然『残ってくれ』といったニュアンスのことを言われるでしょうね」
「それに、かの三浦大輔も横浜に残った理由に『ファンからの声』を挙げていました。確かにファン感謝際での横浜ファンから三浦に送られる、残留を望む悲痛な声は、見るものの胸を打つものがありました。」
「結局のところ、『人の声』は何より大きいのです…そんな場所に行けば、また大きく悩むことになるのでは?せめてFA権を行使するか決断するまで、極力内外部の人間とは接触しないほうがいいでしょう」
山口「し、しかし…だからといってチームのミーティングを欠席するわけには…」
「大丈夫でしょう。球団もわかってくれますよ。それに、一人休んだからなんだというのですか?貴方はFA選手なのですよ。特別なのです」
「…それに、FA残留も認められている。これはFA宣言をしてもいいと、暗に認めている。なればこそ、この時期は慎重にいくべきでは?」
山口「そ、そういわれると…」
山口(むしろこの時期に、来季の去就がわからない選手がいると現場を混乱させる要因になってしまうかもしれない)
(…もともと行き辛かったし…)
山口「…明日のミーティングは欠席してラーメンでも食いに行こう」
ニヤリ
後編へ続く